2008.01.20 Sunday 23:46

償い/矢口敦子

  • Author : R
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    評価:
    矢口 敦子
    幻冬舎
    ¥ 680
    (2003-06)
    JUGEMテーマ:読書

    人気でそうですね、この作家。
    横山秀夫や乃南アサが好きな人(つまり私)は、まず好きなんじゃないでしょうか。
    今の流行に乗ってますよ。

    幻冬舎の十八番。
    色の濃い出版社ですが、商売は手堅い。
    編集者も優秀な人が多いですしね。目利きが多いと思います。
    実際、個性的で面白い本も多いですしね。

    前回、ベストセラーは信用しない方がいい、と書きましたが、本屋の言うことは聞いた方が良いです。私がこの本を買ったのも帯にもありますが、新聞広告で本屋の推薦文を読んだから。私が一番信頼してるのが、神保町の三省堂のポップなんですけどもね(笑)
    面白い本が見つからない時は、本屋大賞の受賞作なんかを読んでみると良いですよ。

    元脳外科医、現ホームレス・日高英介・36歳。
    大学病院の勤務医であった日高は、教授を目指すエリート医師だった。家庭を省みず、自らの昇進のため仕事に忙殺されていた。そんなある日、妻から子供の様子がおかしい、という電話を受けるが、無下にしてしまう。
    そこから、彼の人生は音を立てて崩壊し始める。

    息子、妻を失い、失意のうちにホームレスとなり、町を彷徨ううち、12年前に命を助けた少年と邂逅する。少年は、唯一、医師であった日高を肯定する存在。
    しかし、少年の周りでは、殺人事件が多発する。
    ひょんなことから、警察の捜査に協力するようになった日高は、少年が犯人ではないかと、疑い始める―。

    エリート→転落→再生、という人情型ミステリーの王道。
    となると、当然、人物描写が物語のすべてを左右することになりますが、まず、主人公を見ると、日高は、主人公とするだけの人間的魅力を備えている。
    ホームレス探偵みたいなキャラものとしてシリーズかするのもありだったかも、と思えるくらい、肉厚に描かれていて、まずこの著者の筆力を評価するべきでしょう。

    そして何よりもこの作品をよくあるパターンと一線を画させているのが、15歳の少年・真人。陰鬱な過去を持つ非常にセンシティブな少年として、悲痛な、ものすごい迫力で迫ってきます。

    この時点で、この小説の評価は決まったも同然。

    なーんて、偉そうなことを書きましたが、新人作家に関しては結構、おっかなびっくりなところがあって、こんなチェックをしてしまうんですね(笑)
    ま、粗探ししながら読んでると言えばそうかも。

    この作家に関して言えば、え?なんでそうなっちゃうの?そりゃないだろーとか、そうするより、こうした方が面白いのに、というような粗は見つからず、どんでん返しみたいな、意表をつく趣向はありませんけど、安心して読めました。
    ある意味王道を行っていて伏線をたどっていけば、ちゃんと犯人に行き着きますしね。
    まぁ、人情モノミステリーには、どんでん返しは必要ないといえば、ないですけど。

    先にも書きましたが、このミステリーが特殊なのが、やはり真人という登場人物。
    15歳にして非常に冷徹且つ、哲学的なものの見方をする大人びた少年の内面が、ガラス細工のように脆く、崩れるか崩れないかの瀬戸際の微妙なバランスの中で成り立っている、というのを見た時、この作家の表現力は尋常ではない、と思わされました。

    彼は他者の心の泣き声が聞こえる、というが、恐らくそれは、彼自身の心の泣き声に共鳴しているからでしょう。そしてそれは、誰よりも心の中で泣いていたのは彼だからこそ、聞こえてしまった。
    ラストシーンでは、本当に薄い薄いガラスが砕け散るのが、見えた気がした。

    ストーリーだけを読んでいると、一見、男性が書いているかのようにも思えますが、骨太なストーリーでありながら、これほどの繊細な描写は、やはり女性によるものだなぁ、という感じがしましたね。

    超面白かった!というほどのパワーはまだないですが、今後が非常に楽しみな作家です。
    一読の価値あり。おススメです。

    2017.03.23 Thursday 23:46

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      2008/12/06 1:48 AM
      償い (幻冬舎文庫)クチコミを見る # 出版社: 幻冬舎 (2003/06) # ISBN-10: 4344403770 評価:74点 随分と昔の本だったのだなあ。5年以上前か。 帰りの電車で読み始め、食事中・風呂の中と続いて深夜までかかって一気読み。 盛りだくさんで非常に面白かっ
       
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